第3回 大学を取り巻く現状2017年01月15日

3.1 求められる大学の役割
1) 21世紀は知識基盤社会
新しい知識・情報,技術が、政治、経済、文化等の社会のあらゆる領域での活動の基盤として、重要性が増してきています。知識とは単なる知識(理解した内容を覚えている)ではなく、それをどのような状況下にあっても利用して、解決策が導き出されるまで洗練されたものといえます。言い換えれば、知恵といった方が分り易いでしょう。

今日では、これだけ世界全体が混沌とした状況になり、一方ではテロが思いもかけない地域から発生する状況ですから、前もって準備をして状況に応じた解を求めることはできず、今の状況下で最適と思われる解を何とか導き出す以外にはないでしょう。特に、宗教戦争のような状況になりますと、どちらが正しいとかいうのはできず、また過去の歴史を背負っていますから、先進国、中進国を問わず、発展途上国を含め正義に対する基本的考え方は一定ではなくなるでしょう。

2 ) 知識基盤社会の構築には産学官の協力体制が必要
2-1) 学への期待
知識基盤社会がうまく機能を発揮するためには、個々の組織がうまく働くことが必要です。工業社会の仕組みの中では、何といっても産業界、官界および大学のそれぞれの柱が独立して立ち上がると同時に、有機的にそれぞれが噛合うことが求められます。ネットワークが機能して初めて、難解な課題に対し、挑戦的に挑むことが可能となります。そこにおいても、大学に求められる役割は主に以下の3点に絞られると考えられます。
 ①  知識、技術の創造拠点 : 未知の情報から纏められる知識および最新の技術の進展
 ② 中核人材の養成拠点 :  指導的役割が果たせる中核の技術者を養成する教育拠点
 ③ 社会的寄与を果たす :  最新知識、先端技術に特化した役割のほか、幅広く個々の課題を結び合わせて総合的に判断が下せる組織の構築
2-2) 大学の使命
これは何といっても教育・研究の立場から考えて、しかも学びを追求し続ける学生の人材育成以外にはありません。教育というと、これまでは教師から一方的に教えられ、指導されて最新の知識を蓄えることのように考えられてきました。しかし、それでは未知の分野を開拓する力は育たず、問題、解決法の両者を、当事者と第三者を含めて互に意見交換しながら、ある目的地に到達するように思考力を磨くことです。分り易くはお医者さんの世界で議論される形のカンファレンスと考えればよいでしょう。

あえて、教育と研究の側面を書き記せば以下となるでしょう。
 〇 教育 : 確立された知識を体系的に伝承する(厳密さ)
        先達の教えを学ぶこととは厳密さがなくては何も意味をなさないでしょう。
 〇 研究 : 新しい知識の創出を実践させること(行動、達成)
        新しい知識の獲得は現場に出向いて体得することが全てに優先する事柄です。一口でいえば、泥臭い経験を通じて真の結果が得られるでしょう。
3.2 論文数、プログラム、学生数
1) 研究論文数・被引用数のランク
研究論文が多く引用されているほど、高い質が保証されているのが一般的です。また、グローバル化が進んでいますから、自然科学系、医療系の分野では外国雑誌に掲載されたものが質が高いと評価されています。したがって、先端研究者の論文は引用度が著しく高く、最近ではノーベル賞に直結するぐらいになってきました。

 〇 専門分野ごとの世界上位30機関 (研究重点大学の候補)
   東大 京大 阪大 東北大 名大 九大 北大 
   東工大 一橋大 筑波大 東京医科歯科
   最近のノーベル賞受賞者(埼玉大 山梨大 長崎大)
 〇 国内上位30大学 (研究レベルがある基準を超える大学)
   (国立24 公立2 私立4)

2) 知の拠点
我が国における研究重点大学構想は、平成12年ごろから言われ始めた『遠山 プラン』と呼ばれる文部科学省が審議してきた国の研究レベルのかさ上げのための答申からスタートしています。それ以来、この形がいろいろ変形しながらも、基盤の考え方は同様で推移しているようです。

 〇 COEプログラム( 国立50 公立6 私立35 ):名称は変遷
 〇 知的クラスター、産業クラスター
 〇 特色のある附置研究センター

知の拠点構想は叫ばれてから久しいのですが、従来からの拠点大学とそれに続く中堅大学が入れ替わり立ち代わり参入しているように見えます。文科省を頂点に教育研究組織のヒエラルキーは岩盤規制を作り上げているように見えます。これは、別の視点からみても日本の現状では入試とも密接に絡んでおり、外圧が加わらない限り変更は難しいようです。
         
3) 工学分野の学生数
 〇 学部  中四/全国(国立4200/31300 公立300/4000 私立4700/71000)
 〇 修士   国立42000 公立2800  私立20000
 〇 博士  国立10000 公立500  私立2000
 
日本が目指す国家について経済的側面に限ってみても、それを支える高度専門職の人数が不足していることが分るでしょう。あらゆる分野で世界に伍して技術面で優位に立とうとすれば、まず基礎的な分野を支える人数が最低限必要です。
3.3 産業界への寄与
1) 大学発ベンチャー実績  活動中のBV社 減少しつつある

2) 共同研究実績      上位50大学(国立38 公立1 私立11)

3) 産業界から大学への期待
 ① 基盤研究の実績を期待:シーズとニーズのマッチング
 ② 研究動向、盛衰、論文内容は、企業の開発現場は常にチェック
 ③ 必要な研究室には産業界から直接コンタクトがある
何といっても人材の育成、輩出(技術レベルに応じた)
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  • キーワード解説 『知識基盤社会』  

    新しい知識・情報技術が、政治、経済、文化等の社会のあらゆる領域での活動の基盤として重要度が増しています。簡単には知恵を働かすことです。混沌状態にある世界を、最適と思われる解により導く必要が生じます。知識基盤社会の構築に大学は大きな力を発揮するでしょう。
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