第5回 民営化の分析(全3回の第2回)2017年03月15日

1.民営化の現状
 我が国の民営化は様々な種類がありますが、民活法制定以降の民営化における代表的なものを分類すると、次のようになります。


【1】官営(公営企業、特殊法人を含む)の公共的事業を、官、民共同出資の企業に付託するケース。
【2】同種の公共的事業を、純民間企業に付託するケース。
【3】同種の公共的事業の経営を、官営から株式会社形態に転換するケース。
さらに、民営化を分析する上で欠かせないタイプとして、
【4】民活法制定以前から、「公共的事業を純民間企業が経営している」ケース。
それぞれの主な具体例は、

【1】は、三セク( 第三セクター = 地方自治体と民間の共同出資の企業)。民活(民間活力の活用)の主力手法として全国的に多用されました。

【2】は、PFIと指定管理者。両者とも、主に地方自治体と純民間企業に関わるものです。(今月の「用語解説」参照。)

【3】は、道路、空港、鉄道、郵便など、特殊法人経営であった事業を株式会社形態に転換するもの。例えば「各種道路公団」を「各種道路会社」に、国鉄を「JR各社」に。いずれも国ベースのもので、企業ごとの特別法が制定されました。

【4】は、9電力はじめ電力関連各社。私鉄各社。
2.民営化の効果と課題
(1)民営化の効果
 表は、民営化の一つを例として取り上げ、効果を計数的に想定、整理したものです。民営化は、必要な条件が整った状況で実行された場合には、かなりの効果が期待できることを示しています。この結果、官は財政負担が軽減され、受益者の市民はより低廉に上質の公共サービスを享受でき、民間企業は新たなビジネスチャンスを得ることになります。
(2)民営化の課題
 しかし、一歩踏み込むと種々の問題点、疑問、課題が見えてきます。
① 三セクについて
 第一の問題点は、三セクの破綻と自治体財政の負担です。1980年代の後半大きな期待のもと多くの三セクが設立されました。しかし、中には何の効果も上げずに破綻し、後には自治体の財政負担と自然破壊しか残さないケースもありました。様々な原因が云々されましたが、最も根本的なことは事業の適否検討が著しく不十分な点と思われます。上位官庁の薦め、地元財界の希望、近隣の成功事例、折からの地域振興熱の中での焦り、などから、必要最低限の検討もなしで事業採択されたものがありました。
 第二の問題点は、この結果から生まれた、三セクの一律批判と三セク手法そのものを否定する考え方です。現在全国に3,500社ほどの三セク(会社法法法人)がありますが、前記のように「効果もなく専ら自治体の負担になっている悪い三セク」もある一方、「公共貢献の効果を上げ、自治体財政の負担を軽減している良い三セク」も確実に存在しています。自治体財政健全化のためにはメリハリのある対応が不可欠です。
 第三の問題点は、上記の一律否定論の元である三セクへの誤解です。誤解の一つ目は役割です。三セクの役割は赤字事業の担当であり、赤字状態は当然の結果です。誤解の二つ目は不振三セクの原因です。主因は巷間言われる無責任経営や官民の不協調ではありません。上記のように専ら事業採択の失敗です。
 なお、総務省が2014年に策定した4回目(最新)の三セク指針では、これ等の課題を解決する方向が見えたように思われます。

②PFIと指定管理者について
 PFIは1990年台の最後半に、指定管理者は2000年代初頭に制度化されたもので、代表的な民営化の中では新しい部類です。
 前者は施設を含むトータルな事業を担当する一方、後者は施設の管理を担当するもので、役割は異質です。ただ、共に主に純民間企業が念頭にあること、さらに、両者の発足は共に前記三セク不振に関わりを持つことの共通点があります。
 共通する課題は、「施主である自治体から財政補填は受けない」の原則が貫けるかどうかです。何故ならば、純民間企業である以上当然に利益を求めますが、仮に自治体の支出に利益分が加算されていれば「特定の一純民間企業の利益を財政補填で支えること」になり、市民、納税者の納得は到底得られない筈だからです。
 言い換えれば両者が担当できるのは、財政補填なしで経営できる「黒字資質の事業」に限定されることです。これは、前記三セクとの役割分担、(黒字事業は純民企業、赤字資質は三セク)に徹すれ良いだけのことなのですが。
 この点、現時点でPFIの主力である「サービス提供型」は、収入の全部を自治体の支出に頼る非料金事業=赤字事業の典型であり、フィットしないケースです。今後は黒字資質の「独立採算型」を主なを対象とするべきでありましょう。
③ 特殊法人経営であった事業を株式会社形態に転換するもの
 民営化のピークの時期、国ベースで大きな事業の民営化が進められました。「民間にできるものは民間へ」の言葉のもと、国の中核的政策として進められ大きな成果を挙げました。
 しかし、ここにも種々の疑問と課題が存在します。
 第一で最重要なものは、利益獲得が厳しい事業資質にもかかわらず、関連同業他社との比較上利益が要請され、無理な費用削減による重大なサービスの質の低下が起こっていないか?
 第二は、経営が安定した中、様々な新規事業が開始され、避けるべき「公共的事業の民間事業化」が起こっていないか?関連事業投資のために肝心な本業投資が減少することはないか?
 第三は、民営化は成功し経営は安定する一方、対策として分離した公共性の高い他事業の経営に深刻な悪化や、別な社会的負担の発生がないか?
④ 既に長く公共的事業を純民間企業が経営しているもの
 昨今、多くの重要課題に直面している。現状の体制が最適であるのかどうか?
(以降、次回に続く)
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  • 【キーワード解説】PFIと指定管理者

    〇 日本版PFI
     英国からこの手法が導入された後、僅かな期間を経て1999年7月にPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が成立し、日本版PFIの形が整い本格的な実行の段階になりました。
     当初の事業実行の類型は次の3タイプでした。(一)「サービス提供型」(料金収入ゼロで全ての収入を公共セクターから得る非料金事業。表のDタイプ)。(二)「独立採算型」。(三)「官民協調型」。(両者とも、利用者からの料金を収入の柱とする料金事業。表のA,Cタイプ)。その後現在まで、本質は変わらぬ中、実行の類型は様々に変化・進歩しています。
    〇 指定管理者
     2003年9月に地方自治法が改正され、従来「公の施設」の管理・運営を
    公共セクター(自治体自身、25%出資法人等)に限定していた「管理委託制度」から、民間営利企業等にも門戸を開く「指定管理者制度」に変更されました。これにより、自治体はこの種施設の管理者の選択に、初めて純民間企業を対象にできることになりました。
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