第8回 公共系企業の経営分析実務-1 (全5回)2017年07月15日

はじめに
 今回から5回にわたり、地方自治体の公共的事業を実行する公共系企業について、経営状況を分析する具体的実務を説明したいと思います。これは、今後進められる地方創生の健全な遂行のためには、必要なことであり、また既存の企業が経営不振の場合、これを再生させるためには、不可欠な実務であります。
(1)企業形態と分析手法
 公共系企業には、法非適用の地方公営企業や、財団法人、社団法人等の民法法人など、企業会計方式によらぬ企業もあります。これらについては、そのままでは正しい経営分析ができません。これから、順次説明してゆきますが、企業会計方式によらぬ財務諸表では、経営課題のポイントは埋没して見えにくいからです。従って、これらの企業については、財務諸表を企業会計方式に置き換え、その上で経営分析を行う一手間を要します。

 そこで本稿では、
① まず、企業会計方式を使用している商法法人、つまり株式会社形態である第三セクターを題材として、一連の作業を説明して行きます。
② その上で最後に、企業会計方式を使用していない企業の財務諸表を、企業会計方式に置き換える一手間を説明するつもりです。
(2)時代の進展、変化への対応
 昨今は経済社会の急速な進展、変化に伴い、経営分析も様々な新しい手法や考え方が生まれています。今回のテーマについても、当然変化が必要でありましょう。場合によっては、今回のテーマそのものが、時代遅れとの見方もあるかもしれません。
 このような見方については、次のように考えています。

 第一は、それがより効果的で必要な場合は、躊躇なく新しい手法を分析のために活用すれば良い、ということです。
 経済社会の急速かつ大幅な変化は紛れもないところです。しかし、今回のテーマの対象である、事がら並びにその舞台の実体と本質は、何も変わりはありません。よって今回の説明において対応の本筋を見定め、仮に必要と思われる場合には、適宜新しい手法を使用すればよいと思います。

 第二に、今回のテーマの主な目的の一つは、半世紀近く前から、改善されずに放置されてきた課題解決のために、一石を投ずることであります。
 その課題は、「公共施設の建設費の歯止めない膨張傾向」です。「800億円の予定がいつの間にか1500億円になり、実績は2500億円となった」という類の話は、枚挙にいとまがありません。そして、公共施設の経営結果は、「専ら、主な費用である金利と減価償却費の発生源である設備投資額の多寡にかかる」、と言って過言でありません。
 仮に、この課題が解決できれば勿論、解決に至らずとも方向性が認識されるだけでも、画期的な新しい成果といえましょう。今回のテーマを時代遅れとみるのは誤りと思います。長くなりました。本題に進みましょう。
1.経営分析作業のレベルと段取り
(1)経営分析のレベル
 経営分析には当然ながら、対象企業の大小、求める分析成果の程度により、所要期間、所要の人的体制、その他、様々なレベルがあります。
 今回の連載は、最も小規模なケースとして、期間は2日間、要員は熟練者1名と補助者1名で実施するケースを題材とします。成果品は、「当該企業の担当する事業、施主としての自治体の関わり、当該企業の経営などを、総合的に分析し今後の望ましい状況への対策の要点を明示する」レベルです。
 このレベルは、当事者(公共系企業、関係自治体、関係民間等)において、今後の対策を検討する出発点に充分なり得るものです。
(2)経営分析の段取り
 経営分析作業は、概ね次の段取りがあります。

① 資料依頼
② 資料の事前分析
③ 実査
④ ヒアリング
⑤ まとめ 
 
 経営分析を行うために何よりも重要なことは、企業の経営現場を視察すること、並びに、自治体の幹部と企業の幹部に面会しヒアリングを行うことであります。特に、製造、営業活動等の現場に足を運ぶことが重要です。今回の場合は、前述のように期間は2日間であり、この中で効率的に作業を進めなくてはなりません。そのために、事前に必要最低限の資料を作成してもらう必要があります。そして、経営分析の担当者は事前にその資料を吟味しておくことが欠かせません。

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