4.仕事をこなすには (その1)2017年12月15日

仕事をこなすとは、分りやすく言えば、どういうことが計画され、それがどのようになされれば、なるほど完成していると理解していただけるであろうか。これについて説明する前に、やや学問的になりますが、力学の分野、あるいは高校物理の基礎として習ってきた厳密な意味を持つ仕事( WORK )について考えてみます。この場合基本の定義に従えば、『 仕事とは、力と距離の積の和 』として表されます。他方、このような的確な定義で述べられるような概念を持つ場合ではなくても、様々の事柄を類似した内容で説明することが日常多くなされているようです。使われる語句が厳密ではなくても、事柄を考えるのに十分間に合うレベルの内容として説明される場合が多いからでしょう。
ところで、仕事の意味は一般的に用いられる場合、単位時間当たりの仕事( 仕事率 あるいは 動力 )として考察することが多いかと思います。つまり、単位時間当たりになされた仕事を考えると、効率と呼ばれる概念に近い内容が利用できることになります。言い換えますと、働き具合がすばらしい、あるいは短い時間で早く仕事をやり遂げたというように、その人の能力の評価が、時間の概念を用いれば導入し易くなります。これは、仕事の概念に物理量の基本単位の一つである時間の概念を投入すれば、別の新しい物差しの導入により仕事率が明白となることが推察できるからです。そこで、本論では仕事の内容を比較する上で、厳密な定義に従って説明することから若干離れ、多少厳密さに欠けても、類似した平易な分り易い内容の仕事の意味の場合について、考えてみることにします。
さて、仕事をこなすこととはどんなことなのか、改めて平易な説明を考えてみましょう。内容の如何に関わらず一口に言えば、与えられた仕事量を抜かりなくこなしていき、予定通りの時刻に仕上がっていることを想定した場合、正確にその状態が確認できれば、その仕事は解決し完了したとみなすことが出来るはずです。ここで述べたような漠然とした内容を漠然とした計量道具を用いて測定した場合、結局大切なことは、何といっても種々の物理量が周辺のものと滑らかに繋がっていることが最も重要である事は即座に推察できることです。つまり、全ての事柄がうまく溶け合わず、人の心持も信頼を築いていなければ、簡単に苦労なく予定した仕事量が完成することは困難であると言わざるを得ません。そのために、重要なことは何といっても、対人関係における強い絆が結ばれていることです。このように、全ての事柄は突き詰めていけば、人間性に強くかかわる問題であることが理解されるでしょう。

◇ 4.1 能力とは何をもって言うのか
前文の中で、仕事をこなすことは人との関わりが重要であることと、述べました。
次に、すべての事柄について、計画した内容を遂行するには、人の持つ能力はどのように関係するものか考えてみます。つまり、能力と仕事のこなし方との関係を考えておくことが大切です。言い換えれば、能力とはどんな内容を包含したものといえばよいのでしょうか。ここでは、人が計画した内容の作業を進めていく(仕事をこなす)場合、最小限必要な内容について、3つの事柄をあげて説明を加えてみましょう。

能力とは、簡単に言えば、全ての事柄に対して、以下に示す3つの項目に対しきちんとした準備が施され、遅滞なく対処できる状態にしていることと解釈すれば随分分り易い事柄ではないでしょうか。

3つの項目について、能力に関する内容を記述しておきます。3つの項目は、(1)目的意識、(2)問題意識、(3)価値意識、としてまとめています。

(1) 目的意識 ( 何のために、仕事をこなしていくか )
まず、何のために仕事をこなすか、について考えてみましょう。これは、人の持つ全能力を推し量る事柄として、最も重要なポイントであると指摘できます。どんな内容でも考え始めると際限がなく、考えが発散しがちになりますが、振り返って、何のためにと問い質すと、明白な方向性が浮かび上がることが分かるでしょう。つまり、何のためと突き詰めれば、いつまでにとか、内容は重要であろうか、等とやり過ごした内容の問題点がかなりはっきりしてくるようです。一方、どの方向に話を向けていくことが最上なのかと問えば、暗中模索の中をさらに漂い始めるようなことも、生じるのではないでしょうか。しかし、仕事をこなすという使命はより明白となり、目的意識をもつことが最重要な論点であることには間違いありません。
(2) 問題意識 ( 必要性・公益性を考える )
次に、仕事で得られた事柄は、本当に必要な事柄であろうか、と問うことが望まれます。どれほど重要であるか、今必要な事柄か、地域社会全体で人の役に立つのか、といった内容はしばしば論点に上り、膠着状態が続くことがあり得ます。
また、社会全般にとり公益性が認められるのか、など積極的に重要性を議論しなければならないことが多くあるように思えます。さらに、課題をどの方向から見つめ直すのかという観点からも必要性、重要性が課題となり、動き難い状態が生じることもよく知られた社会現象です。また、内容を深く掘り下げることで仕事の風向きが思いがけない良い方向性を生み出すことも、しばしばある事も知られたことです。さらに、事柄を遂行していく上において、最低限必要な事柄は何なのか、あるいは行動を起こした時に公益性は何であるのか、と予め考えておく必要があるように思われます。
(3) 価値意識 ( 時間・空間域を占める )
何か行動がなされたとき、その前後において得られた行動による価値(仕事量)は、全て必要なものばかりではないことも考慮しておく必要があります。それは、仕事の事柄を考えるとき、価値の空間への広がりばかりではなく、時間領域への広がりと、時間変化における価値の急変化(たいていは、ストレスとしてマイナス効果を与えることが多い)の両者を考慮する必要があるからです。仕事をこなす能力を考えた場合、意識の中に閉じ込められている内容のうち、目的と問題と価値との相互作用はどんな状態がベストな状態か、普通は全く不明であるように思われます。だからこそ、順序だてて必要以上にあらゆる事柄を意識の上らせておくことは大切で、そうすることが望まれるでしょう。

◇ 4.2 どんな準備をすれば間に合うのか
仕事をこなすには、何が一番重要なポイントなのか、あるいは何からまず手掛けておかねばならないか、といった事柄は、簡単そうで難しい課題であり、易しそうで(順序を追っていけば方法論は明白となっている)、と想像もできるため、安易に考えがちです。結局、簡単な話の筋を見ただけでも、かえって複雑であるといった方が近い状況と思われます。そこで、以下に私が心掛けて進めている方法論、手解き、といった内容を簡単に記述しておきましょう。
(1) まず、高い志を持つこと
何といっても志を持つこと、できれば高い志を堅持することの一点に尽きると考えています。これについて、面白く、かつ有意義で、なお深く共鳴できることとして、照会したい文面があります。よく知られた幸田露伴の努力論の中の一項目中のものです。
努力論 幸田露伴、岩波文庫 p.110
「凡庸の資質と卓絶せる事功」

『 いわゆる志を立つることは、あるものに向かって心の方向を確定する意味。
 言い換えれば、心の把持するところのものを定める。
 心の執る処のものを最も善いものにしなければならぬのは自然の道理である。
 随って志を立つるには固からんことを欲する前に、先ず高からんことを欲するのが必要で、さて志立って後はその固からんことを必要とする。』

さらに続けて、『性格がその志に適応しなければ駄目である、』と述べている。

驚くことは、志と性格が互いに影響し合うとする考え方を露伴が持ったのはいかなる事か、が筆者の興味深く知りたい事柄である。
(2) いつでも実践できること
仕事はいついかなる時に舞い込んでくるかは、皆目見当がつかないとみていた方が良い。これは自分の年齢にも依存し、分別が高まると頻繁に仕事の依頼がやってくることになる。一方、依頼する側にも年齢があり、その人の活躍度、目の付け所に依存し、思いがけない仕事のチャンスに巡り合うことも多くなる。もちろん齢を重ねると、自然と話は遠ざかってくることは致し方ないものである。だからこそ、いつでも出番に応じて待機していますという姿勢が必要となる。先人の中でも一流と目される人は、準備は万端で、さあいらっしゃいと待ちかねる風情が感じられます。
実践内容① 鍛錬に励む (型と乱取り)
まず鍛錬に励むことは、どんな学問でも、どんなスポーツでも、同じことであり、黙々と練習に打ち込む姿は必須のものであろう。つまり、自分との戦いに打ち勝って初めて他人より少し頂上に近いところで訓練が仕上がっていると解釈できるかと思います。といっても、がむしゃらにではなく、よき師について、良き指導体制の中で自分が満足できる練習法であれば、素晴らしい結果に結び付くことは間違いないであろう。型と乱取りの両者がきちんと磨かれてこそ、大いなる成長が待っていると信じたい。
実践内容② 朗読、文章書き、声を上げ話す
専攻している分野によるが、朗読、文章書き、声を上げて話す、などの訓練は、初期における練習であると同時に中盤にかかった練習法でもある。つまりきちんとした手解きを間違いなく修めているか、何事にでも指導された訓練を行っているか、は重要であるが、本人にとってはどこまでがどのレベルか、など見当が付かない状態で自己との精神的せめぎ合いを行っているであろう。このわけが分らない状態での訓練は後になって振り返れば、どれ程きちんとした訓練をこなしたかのバロメーターとして結果が現れてくる。その時、気が付いてもすでに遅く、敗者のグループに回っているかもしれない。だから、信じて淡々とこなしていくことが本人の成長に計り知れない影響を及ぼしてくれるはずである。
実践内容③ 考えを図に表す
いかなる事象であっても、正しく相手に今の状況を知らせることは、極めて大切なことである。そのためには自分の考えを伝えるために図式法を取入れてみたら如何であろうか。詳しいことは自分から調べ、自分で実行してみて、最良と思われる方法を編み出してみたら如何でしょうか。特に、事象の変化傾向が知りたいとき、人の目では弱点があり、変化量の認識、平行、垂直のバランス等、心がけ次第で段々と分ってくることも多い。結局、自分流の方法論に入り込む前に、よき師から正しい方法論を学び取り、それを発展させて自分流の形式に移行すれば間違いの少ないやり方が身につくであろう。

※以下、次号のコラムでお届けいたします。
(3)必ず完成させる
(4)相手を信頼する
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