6.評価を受けるとは2018年02月15日

どんな組織であっても、評価を受けなければならない理由がどこかにあるのでしょうか。組織ごとに評価を受けることは、必ずや、何か利点を得る方向に組織を誘導することに繋がることになるのではないでしょうか。つまり、これまでに問われてきた評価の必要性を異なる考え方から、異なる目的意識を持つ方法論に衣替えすると、どんな変化が結果に生まれるのでしょうか。ずいぶん、興味が湧く課題であるとは思われませんか。
そこで、以下に述べる新しい視点から、評価の道筋を考え直してみます。そのため、① 失敗を生かすにはという考え方と、② 創造性を伸ばすにはという考え方を新しく導入してみようと思います。

まず、失敗した事柄から何を学ぶかについて考えます。創発する過程における失敗は、教訓でもあり、思考実験の繰り返しにより独創的成果につながるものでもあります。つまり、よく言われるチャレンジ精神を以って前進してみることです。一方、避けなければならない失敗は製品の成果が問われるときで、人為ミス、安全確保の不徹底という重大事故のような場合です。
次に、創造性を伸ばすには、創造教育の必要性が求められます。知識の伝達にあたり、Serendipity (求めずして思わぬ発見する能力)の発育を促すことでしょう。これには、人間的に魅力のある人材を育み、幅広い教養を有するように鍛錬することが望まれます。上述した内容から、評価を受けることによって、次のステップへの飛躍が大いに期待されるでしょう。

◇6.1 評価という言葉の持つ役割
一般的には、言葉の意味を探すには、 『広辞苑』 という便利で格調高い辞書が世の中には存在しています。これを利用した場合について考えてみましょう。
〇 広辞苑(第七版) 新村 出 編、岩波書店 2018
評価という言葉の意味は、例えば『広辞苑』をみますと、いくつかの簡単な例が述べられています。

① 品物などの価格を定めること
② 善悪、美醜、優劣などの価値を判じ定めること

ここに例示しましたように、両者が代表的な説明として述べられています。 このように見てみますと、評価という語句は、いろいろな側面について、十分妥当な説明がなされていると判断できるものでしょうか。少し違和感を覚える方もいらっしゃるでしょう。上記の①と②の説明から、異なる専門分野に対しても、共通して、評価の中身が理解されるような言葉の意味を探すのは大変難しく感じられます。

それはなぜかについて、簡単に説明を試みてみましょう。それに関して大まかに2つの観点から述べてみます。従来、いろいろな評価という言葉の説明からは、2つの意味が同時に備わっており、2つの解釈にとってどちらを優先的に考えるべきかは決定的な意味を与えてしまいます。ですから、簡単にではあっても、一定の順序に従って検討しなければなりません。間違えば、とんでもない方向に視点が一方的にずれてしまう恐れが生じます。もう一つは、一般的に言って各専門分野にとり、用いる言葉が著しく異なるため、専門そのものが極めて重要な意味を持つことになり、どちらが解釈する上で最適な言葉であるのか理解し難くなるためでもあります。

そこで、以下に評価に関する代表的な3つの例を考えて、おおまかに役割を分類してみます。ここで勝手に代表的と申し上げたのは、日常生活をする際に必要な言葉となるものとして、(1)評価、evaluation,(2)評価、assessment,(3)評価、estimate, を取り上げることにしたからです。
(1)評価 【 evaluation 】
1)成果や結果の評価
まず、思い浮かぶ評価という概念は、成果が評価できる、あるいは妥当な結果が得られるという言葉として捉えるものでしょう。

2)モノや人の価値の評価 
より一般的な価値の評価として、対象物がモノの場合の価値と人の価値を議論する際に用いられる評価でしょう。人とモノの価値を同じ尺度で比べることができる面白い評価法と考えてよいようです。

3)行政機関の政策評価
行政機関が計画を立てたものが、経年した後、計画がうまく実行されたかどうかをチェックすることが一般的に行われます。そのとき、計画の何%が実現できたかどうかの評価が問われ、行政サイドの再重要評価となっているようです。時間的、空間的に広い範囲の意味をもつ評価と考えるべきでしょう。

(2)評価 【 assessment 】
1)価値の測定、評価
最近よく用いられる評価の用語として、環境アセスメントという言葉が利用されています。環境状態の善悪を具体的に調査すれば、数値として環境の状態が理解できることになり、誰にとっても明確に判定出来る数値が得られることになります。その場合の最適な数値目標となるでしょう。

2)判断を下す過程の評価 
ある判断が求められる時、始点と終点における評価定数を利用して、今後の状態を予測することがあります。この判断基準を用いる際に、変化過程が評価項目の大切な変動状態を表すことになります。つまり、変化状態を考慮に入れる評価法であり、厳密さが問われるときに利用することが多いようです。

3)現象を客観的に判断
現状が良い悪いという評価をなすよりも、比較するのに好都合な係数を用いて、客観的な判断が求められることがしばしばあります。主観的に評価が陥りがちな所を食い止める評価法として役立ちます。

(3)評価 【 estimate 】
1)鑑定、推定、概算、評価 
この例の場合は、簡単に言えば見積もりを提示することでしょう。つまり、モノの価値(値段に換算して)がどの程度か、概略推定する場合に利用するもののようです。例えば、厳密にいくらの価値であると決めるよりも、相対評価と絶対価値の両者を睨んだ適切な評価法と言えそうです。

2)価値、数量の個人的判断
価値を見出すときに、自分で考えた物差しを利用して、相対的に判定するときに用いることができそうです。おそらく、見積もりを与えることと同じような表現でしょう。


◇6.2 評価を受けるとは、信頼を得ること
仕事をこなすには、何といっても信頼を築いておかねばなりません。重大で緊急な要件が発生した場合、速やかにことの顚末が終了するには、周辺状況も何事もなく落ち着いた状況が望まれるはずです。そのためには、本コラムで述べてきましたように、当事者の能力はもとより、準備を怠っていないか、仕事をこなす手順は正しいか等チェックしておかなければなりません。
最も大切なことは、手本(流儀)を過去の歴史に学び、かつ良き指導者に直接触れ合いながら、心を解き明かして教えを乞うことが必要です。仕事を進めるには、人の問題を解決することに外なりません。


◇6.3 準備努力
評価を受ける際の準備状況を考えてみましょう。どんな些細な組織であっても、評価を受ける順序や形式は無視してはなりません。いつも話題に挙げている3つの事柄を掲げて再確認しておきます。
まず、師を選ぶことです。間違いのない考え方はそのような師からの勉強としてのみ伝授されるものです。つぎに、師から直接手解きを受けることが大切です。つまり、教えを実践的に学ぶことがとりわけ重要です。いわゆる塩梅が良い解は実践を通してのみ学び取ることが可能です。もうひとつ、遠隔操作による手解きはきちんとした道筋をたどることは困難で、ややもすれば隣接する道に入り込み、間違いを辿ることになります。つまり、基本にのっとり修行を修めるべきです。


◇6.4 教育研究評価(項目、視点、基礎)の例
評価という言葉について考えてみますと、評価をする側とされる側の両者の立場は、まったく正反対であることに気づきます。さらに、従来の評価方法に関する傾向は、する側の人が年齢が高く、より経験を積んだ人が多いように思います。加えて、専門領域が異なる評価者の場合、公平な立場を評価者自身が自分で作り上げ、ここに基底を置いて、評価者として参加するのが通例のようです。つまり、きちんとした物差し(評価リストおよび手順など)を持ち合わせていなくても、任された判断範囲について個人の物差しを用いて実施してきたきらいがあります。そんな中で、以下に列挙する項目について、評価に関する考え方をより公平な立場で検討するにはどうすればよいか、気付きを考えてみましょう。以下に、教育研究活動をしている人の場合の評価を考えてみます。
(1)評価をする理由は何か
まず、評価をなぜするのか、という議論の下地が必要です。例えば、教育研究を通した人材育成とは、どんな意義があるのかという視点を持っておく必要があります。次に、教員のもつ特性(教育、研究調査活動)を評価の中にどのように取り込むか,纏めておくことが問われます。さらに、プラス項目だけを拾い上げることにより、妥当な評価が可能かどうかも調査しておくと役に立つことがあるかもしれません。
(2)評価の進め方
評価全体の構想の中で、評価はそれぞれ固有の文化、文明を伴って発展してきた国や民族の特徴が潜むものです。これをきっちりとわきまえておく必要があるでしょう。例えば、時間の枠を取入れた評価であっても、長い時間がたてば自然に個人的な差異が生じてくることになります。これと比べて、業績評価は数値に表れた見かけの評価になり易い懸念があります。評価の対象者の長所を伸ばすことが出来る評価がないものか日常、検討しておくのも大切です。
(3)組織としての大学の特色を生かす
人の評価にあたり、まず組織全般の役割が明確である必要があります。例えば、大学教員は4つの役割(教育、研究、運営、社会貢献)を通して、人材育成に参加している集団です。そこで、この4つの役割が任務である人材育成にどう役立つのか、考えておくことはまさしく評価方法の一種でもあるでしょう。一方、育成される側の人材から見れば、社会に巣立ってから自分の能力を還元することで役に立つ存在となっていくものと思われます。評価はこの時点に至り、有益なものとなることが期待されるものです。
(4)研究と教育の一体性
大学は、研究を通した教育を施すことにより、人材育成がなされます。分り易く言うと、理論と実践がうまく噛合って目的の一つが達成されます。このことは、教育と研究は表裏一体であり、どちらが優先されるということではありません。従って、評価は単純な項目で大まかな基準を用いて実行するのがベストでしょう。評価項目が細かく分類され、全体評価が困難になっては意味がないことになります。


◇6.5 評価を受けるとは、を終えて
評価を受けるとはどういうことであるのか、この点について若干復習として考えてみたものが、一連の本コラムの題材です。評価について、総合的に纏めを作れば、案外簡単な表現法で記述することが出来そうであることがおぼろげ乍ら分かってきました。
例えば、『徒然草』に含まれる大量のエピソードの内容を解釈してみれば、意外にも芯を貫くような考えも転がっているような気持にさえなるようです。これを簡単に締めくくる内容として以下に取り上げておきます。
〇 徒然草 吉田兼好 第百九十四段「達人の人を見る眼は」講談社文庫
達人が人を見る目は、少しも誤るところがないはずである。という言葉は、評価という責務を考えるとき好例であるでしょう。評価を受けるとき、この言葉を常に思い起こすことが肝心です。
兼好法師は、さらに、洞察力のある人が、道理にくらい我々を見るのは、手のひらの上の物を見るようなものである、とも述べています。評価という一語を取っただけでも、奥深い内容が潜んでいるようです。
 
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