第12回 公共系企業の経営分析実務-5 (全6回*)2018年02月15日

今回は、経営分析実務の内「6.報告書の作成」について説明します。
なお、今回の企画は当初全5回の予定でしたが、全6回に変更いたします。
6.報告書の作成
(1)報告書の事例
対象ごとに様々な形があるのは当然です。事例として「ある町において4社の第三セクター等があり、その中の1社を直接の対象として経営分析依頼を受けたケース」を取り上げました。報告書は出来るだけコンパクトに、付表を含めて最長でも10頁以内が望ましいと思います。
【報告書・骨格の事例】
〇 経営分析出張報告
               年 月 日
               アドバイザー  〇社 〇〇 
1.出張概要
(1)日時  年 月 日~ 日
(2)目的  〇県〇町の第三セクター〇社に関するアドバイス 
(3)ヒアリング、意見交換の対象者
 ■ 〇町側 〇〇
 ■ 〇社側 〇〇 

2.〇町と第三セクター(以下三セクという)等の概要
(1)〇町の現状
 ■ 人口、産業構造等
 ■ 首長の略歴
 ■ 合併の経緯
 ■ 財政規模と現況

(2)三セク等の現状
 ①三セク等全社の概要
 ■ 町の合併経緯と各社の経緯
 ■ 各社の社長他役員と町幹部の関わり方、取締役会の開催状況
 ■ 各社の社名、設立時期、資本金、町の出資比率、業種、経営状況

 ②今回依頼の〇社の概要
 ■ 会社概要
 ■ 施設状況(町の所有物件借用の条件など)、従業員状況
 ■ 営業状況
 ■ 収支・財務状況

(3) 三セクに対する町の対応

3.三セク固有の評価方法(アドバイスの前提として)
 ■ 三セクの経営分析においては、民間企業用とは異なる固有な評価尺度と評価方法が欠かせません。
 ■ 三セク固有の評価方法の詳細については、本コラム9回目を参照下さい。
 ■ この点は、経営分析担当者が念頭に置くのは勿論、依頼者側へのアドバイスにおいても、十分に伝達し理解を得ることが務めです。
 ■ このために、三セク等公共系企業の経営分析報告書には、あえて、その都度これを記述するのが良いと思います。

記述の事例は以下の通りです。

(1)民間企業と三セクの相違点
 ■ 民間企業は事業利益が目的であり、健全企業は自力黒字が普通である。一方、三セクは公共利益が目的であり、健全企業でも自力赤字が普通である。

(2)三セク固有の評価方法
 ■ 次の3項目のクリアか否かの判定に尽きる。

【1】事業が適切か (⇒赤字を税金で補填して実行する価値の有無)。
【2】自力収支改良の成果は (⇒三セクの自助努力の程度)。
【3】必要最低限の収支、財務状態の維持は (⇒補填の円滑な実行の程度)。

良い三セク(継続が適切)は、3点全てをクリアする。また、3点中【1】が最重要で、ノンクリアの場合は重症。一方、【1】をクリアし【2】【3】ノンクリアの場合は軽症で処方箋あり。

 ■ 判定の具体的方法は、
【1】 「事業の必要性【n】+効果【b】>赤字補填額【c】」の判定式で判定。
【2】【3】は、 【B・S】(貸借対照表=Balance Sheet)と【P・L】(損益計算書=Profit & Loss statement)の分析と、ヒアリングにより判定。

4.アドバイス
(1)町の「三セク等への対応」について
対応について、改善のアドバイスをする場合もあります。問題事例の主なものは以下の通りです。

(例えば)
 ■ 三セクについて、民間企業と同様に「自力損益の黒字」が当然とする姿勢の場合。その結果、「所要な赤字補填(=施設借料の減免など) は、事業を採択した自治体の責務であることの自覚」がなく、施設借料の減免を渋る傾向がある場合。
 ■ 三セクの経営改善方法として、前記の3項目による根本的な判定ではなく、いたずらに些末な対策(過度に詳細な業務細部の調査分析等)を行う傾向がある場合。
 ■ 各社の幹部の課題(常勤役員不在等)など企業体制に問題がある場合。
  
その他も含め、それぞれの問題に適応する表現でアドバイスをします。


(2)三セク等について
記述の事例は以下の通りです。

① 依頼された〇社についての回答

(例えば、3項目全てクリアの場合)
 ■ 上記3項目の判定は、
【1】は、年間の赤字補填額(c)は30百万円(町からの施設借料60百万円のうち50%を免除)に対し、効果(b)は雇用効果50百万円(@2百万円/年×25人)であり、n+b>cの判定式をクリア。
【2】は、常勤役員等幹部は充実しており経営体制に問題なし。「自力損益(赤字削減状況)」は、同業他社と比較して水準並み。
【3】は、町からの施設借料減免(=赤字の公共補填)は円滑。非常時に対応する「取り崩し可能な現預金」の手持ちは月商の4ヶ月あり問題なし。
 ■ 結論は、「現状で継続は適切」。

(例えば、【1】 はクリア、【2】【3】がノンクリアの場合)
 ■ 【2】については、常勤役員がなく自主的経営が可能な体制でない。一方【3】については、施設借料の減免の実行が円滑に進まないので、収支財務が不安定。
 ■ 結論は、「上記の課題を解決すれば経営継続可能」。

(例えば、【1】がノンクリアの場合)
 ■ 結論は、「抜本的な対策を検討すべき。万策尽きた場合は整理へ」。


② 三セク等全社を通しての回答

(例えば)
 ■ 〇社はA社と統合するのも一つの選択肢。
 ■ 町全体のVFM(ValueForMoney=税金の最有効活用)の上では、B社は事業中止の検討もあり得る。
 ■ 一方、B社は合併前の△町において設立され、当該地域における重要性が特に大きいので、あえて継続の選択もあり得る。この場合は、自治体合併による経済効果の一部をB社継続の原資とする。

以上の様に、町全体の配慮は欠かせません。         


 以上  
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